てごみお「 Buttercup 」②

 

 

 

俺はというと、なんら変わらない日常を過ごしていた。

 

なんら変わらない…………。

 

ハロウィンになら、クリスマスになら、あの場所でもう一度彼女に会えるかも、なんて思ったこともあったけど。

 

何度、何度となくマネージャーに訊いても

有り難いことに仕事、仕事、仕事で。

 

あっという間に年も明けた。

 

 

俺の中に居続ける彼女に、この間仕事でもらった花束はぴったりだったんだ。

 

まるっこくて、幾重にもなる、するすると肌触りのよい花びら。あの、良い布、シルクみたいな。

束ねられた色の中で、黄色いものが不思議と目を惹いたので家のグラスに水を張ってしばらく挿していた。

 

そうしているうちに、花を見るたび話をしている間の彼女のやわらかさとか心地よさとかそんなものを思い出して。

花は褪せても胸の中で居場所を持ち、俺はそれを指先で撫でる想像をすることでだいぶと落ち着くのだった。

 

「会いたいなぁ」

 

呟いた言葉は一人の家ではよく響いて、自分の声は自分の心に返ってくる。

 

なんか、もっかい会いたいなぁ。

 

不思議で仕方なかった。

恋愛感情に似ていて、だけどちょっとちがう。

自分の気持ちに探りを入れては首を傾げる日々が続くのだった。