あの時、君はどちらだったのだろう。
他の人に気付かれた俺に壁を感じて離れていったのか、それとも俺を一人にすることへの配慮か。
出逢ったときに俺のファンだと言っていた。
後者だと良いなと期待をする。俺、勝手だな。
身勝手な期待と、一緒に過ごした時間で色付きを増したアネモネと、移動車の窓の外には桜が咲いている。
「おはようございまーーす」
ライブ期間は上手く行くよう祈る気持ちと、やっぱり楽しいものだからハイになる感覚と、ぐるぐる渦巻く心境だ。
あともう一つ。
どこかで君に会えたらいいなと。そんな願いも抱きながら。
この気持ちは愛おしいだと、思い至った。
「なぁ、手越、この間の花の名前のことだけどさ」
「アネモネのこと?」
「そうそれ。気になってよくよく調べたらアネモネじゃなさそうでさ。ラナンキュラスなんじゃないかって。それだけなんだけど。」
「ラナンキュラス?何がちがうの?」
「花びらのつくりとか、色々あるみたいだけど。大まかな種類はどっちも同じみたいだからかなり似てるみたいだよ」
「ラナンキュラス、ねぇ。」
携帯電話で検索すると花言葉にたどり着いてなるほどな、ラナンキュラスだわ、と納得した。シゲやるじゃん。
暗転の中でペンライトが揺れる。
耳元でカウントが聞こえる。
きらびやかに俺をライトが照らせば上がる歓声。
そっと指を擦り合わせた、胸の中の花をそっと愛でるように。
ファンのみんなのまなざしが俺をキラキラと輝かせてくれる。そんなみんなに笑顔を咲かせてあげられるように。
たくさんの愛を込めて。
一際煌めく光に目を奪われたとき、俺の笑顔も満開だったと思う。
きみは、唯一のぼくの花。
I am dazzled by your charms.
Yuya Tegoshi ×To my dearest
* full bloom *